
挑戦を支える全国各地の皆様に光を当てるSupporter Interview。今回は鳥取県で地産外消のEC事業を手掛ける高林さんに、起業家として鳥取の経済活性化や人材育成に挑みつつ、アイデアをカタチにするスタートアップのコミュニティを山陰地方で盛り立てる想いや背景、そして今後のチャレンジについて伺いました。
── 高林さんの現在の取り組みについてお聞かせ願えますでしょうか?
鳥取県の地方在住の30代~40代の子育てが一段落した女性の人材育成事業を手掛けています。成長したい・稼ぎたい・今の現状を変えていきたい・そんな想いを持つ皆様に鳥取の地域活性化に繋がるEC事業を通じてスキルアップの機会をお届けしています。
── 地域活性化に繋がるEC事業とは興味深いですね。詳細をお願いできますか?
鳥取県内には地場のものを活かして商品を作り上げている小規模事業者が多々いらっしゃるんです。けれども小規模なので残念ながらネットショップを専任できるだけの余裕もない。そこで弊社ダブルノットがパートナーとしてEC事業を代行しているんです。
── 具体的にどのようなビジネスモデルでしょうか?
とてもシンプルな成功報酬型です。ECを通じて売れた分の手数料をいただく形ですね。成功報酬型にすることで、これまでネットショップにチャレンジ出来なかった事業者様が新しい販路を開拓し、顧客基盤を築けたという嬉しいお声も多々いただいています。
── その成功報酬型のEC事業にコミットしているのが、冒頭で仰られた新しく手に職を付けたいと願っている鳥取の女性の皆様、ということなんですね。
そうです。今でこそチームのスキルが上がってきたので安定してお客様に貢献できる体制が整ってきましたが、もともとは素人集団だったのですぐに売り上げは出ず、長い間お客様をお待たせすることが過去に多々ありました。

チームとして成長したダブルノットの皆様
── EC事業の実践を通じた人材育成、正にスタートアップの実践を通じた起業家育成のStartupWeekend(以下SW)と文脈がとてもとても似通っていますね。
私がSWを手掛ける背景には、ビジネスが出来る人材を作りたい、地方でもっともっと売り上げが立てられる人材を増やしていきたい、という想いがあるからです。実は社員にも研修としてSWに強制的に参加をさせたり、またオーガナイザー(SWの企画運営)にもコミットするようプレッシャーをかけています(笑)社内だけでは得られない価値がそこにはあります。
── そんな風にして高林さんが鳥取でSWを手掛け続けた結果として起業家コミュニティが徐々に大きくなっていると伺っていますが、その価値はどこにあると考えていらっしゃいますか?
大きく分けて二つあると考えています。一つ目は起業家の横の繋がり。やはり地方になればなるほど、同じ想いや課題感を持っている経営者や起業家の数は限られてしまって、孤立しがちになってしまう。そんな方々を強制的にSWというコミュニティを使って横に繋げていくイメージです。
── SWにお力添えくださる皆様への価値提供ですね。それではもう一つは?
二つ目は起業家を目指す、もしくは目指していないかもしれないけれども、現状を変えていきたい変化を求める方々のコミュニティ。これも起業家と同じなんですが、人口が限られてしまうと「何か新しいことを始めたいな」「現状に不満を持っていて、自らの力で変えていきたい」「この課題を何とかして解決したい」といった思考を持つ人は限られてしまう。そんな想いが繋がることで変化が実際に起こせていけると考えています。
── コミュニティの価値が発揮されたエピソードなどありますか?
起業家同士の横の繋がりが増えたことで、東京のスタートアップが鳥取でPoCを回すなんてことも増えましたし、また高校の先生と連携が生まれ起業家育成の取り組みが高校生にお届けできるようになりました。繋がりが未来を生んでいるなと感じています。実はうちの社員の一人もコミュニティ経由で採用が決まった、なんてエピソードもあるぐらいです(笑)

メンターとして参加者の方々にフィードバックを届ける高林さん
── そんな風にコミュニティを盛り立てる高林さんの原動力はどこにありますか?
鳥取は人口最小県。少し言い方は乱暴かもしれないですが、もし仮に無くなってしまっても特に日本経済に大きなインパクトはないんです。数十年後には冗談抜きで消滅しているかもしれない。だからといって、なくなっても良いとは自分は思わないんです。それを指をくわえてぼーっと眺めたくないんです。
── 現状を見過ごせない。放置できないということですね。
起業家コミュニティだけでは全く力足らずかもしれませんが、それをやることで経済の活性化にも繋がると信じています。
── 他に何か、現状打破のために手掛けていらっしゃることはありますか?
実はファンドを作りたいと思っています。鳥取から何か新しい事業を興したい、そんな皆様に挑戦の機会を提供できるようになりたいと思っています。キャリアの中で融資する側にいたこともあるのですが、やはり融資という側面だけでは見送りになってしまうものも数多ありました。だからこそ、投資の環境も整備して起業家を支えられればと考えています。
── 既存のコミュニティの後のステップを担われる、ということでしょうか?
どちらかというと、今のコミュニティは後任に任せて、私は「前」と「後」をやりたいと思っているんです。
── 「後」はファンドですよね?「前」とはどのような取り組みでしょうか?
SWにいらっしゃらない方々のサポートをしたいと思っているんです。例えばシングルマザーで多忙を極めていらっしゃる方とか。今は子育てが一段落した皆様にEC事業の実践を通じた人材育成を手掛けているものの、まだ落ち着いていない皆様にも機会提供、現状を打破するきっかけをお届け出来ればなと。もちろん、その領域に足を踏み込むと行政に近しい動きになってしまうので、民間企業としてやるべきか、という議論は残りますが。
── 「前」と「後」について解説ありがとうございます。ではスタートアップの始まりのコミュニティそのものにはどのように関わっていかれますか?
スタートアップの本来の趣旨からは少しズレるかもしれませんが、地方で二代目三代目として頑張っている方々をもっともっとコミュニティに巻き込んでいきたいなと思っています。老舗企業の次代の経営者たちが変わるきっかけとしても地域に根付かせていきたいですね。
── 高林さんのコミットが益々増えそうですね…!!!
いえ、既にコミュニティとして回り始めた鳥取では出来る限り表に出ないようにしたいなと思っています。私がいることでしか回らないコミュニティであれば、それ以上大きくなりませんし、また私は他のエリアも手掛けていきたいと考えているからです。最初にお伝えした課題感は鳥取だけのものではないと思っているので。

自身の取り組みを若手に説明する高林さん
── 具体的に横展開を検討されているエリアはありますか?
社員の一人の故郷に島根県の石見地域があるので、まずそこでコミュニティを盛り上げていきたいなと思います。その社員には「業務時間を使ってもいいから自由にやりなさい!」と発破をかけつつ(笑)そして他には兵庫県ですね。
── 兵庫県に何かゆかりをお持ちでしょうか?
実は島根が鳥取と接しているように、兵庫も鳥取と接していて、なんと私のオフィスから車で30分で兵庫県に入れちゃうんです。神戸市までは約1時間で到着できます。ということでダブルノットの支社を作ろうと検討中なんです。そこでまた、その地域に関わる起業家を集めてコミュニティを育てられればと考えています。
── 鳥取は他の人に任されるとのことでしたが、後任の理想像はありますか?
自分の想いを曲げない人ですね。願わくば経済を活性化したい、売り上げを伸ばしたいとガツガツしていて、そこを譲らない人がいいですね(笑)
── 売り上げを譲らない人
これにはもちろん理由があって、鳥取のような地方に行けば行くほど、何故かリーダーには非営利気質の方が増えるんです。「地域が元気になったらいい」「みんなで一緒に取り組めたらいい」といった風に地域活性化や地域貢献に熱を燃やすような。もちろんそれがダメということではなく、お金儲けに一切繋がらない活動ばかりをやりたがる人が多いんです。
── お金儲けが嫌われている空気があるんでしょうか?
「お金は引っ張ってきたもんが勝つ」という空気感がありますね。お金は「自らの力で稼ぐ」ではなく「誰かから恵んで貰う」という感覚が強いのでしょう。人によっては「お金儲けは悪」と口にされる方もいらっしゃるぐらいです。
── 事業を通じて人生育成を手掛けられるダブルノット社ではもちろんお金儲けは...
正義です。お金をいただくということは、お客様の課題解決を成し得た証です。そしてお金をいただくからこそ事業を続けることが出来る。もちろん稼いだお金はどうやって事業に使うのが正しいのか、また関係各位にどのように分配して一人一人の人生に資するようにすべきなのか、といった議論はありますが、お金を稼がないことには何も始まらないからです。
── コミュニティを支えるリーダーも起業家であれ、ということですね。
そうです。起業家を支えるコミュニティであるならば、支える人も起業家であるべきです。ただ起業家のファンであれば野球場のスタンドで見続けていればいいんです。ただコミュニティとしてご一緒するからには、支える側はプレイヤーとしても活躍し続けなくてはならないと私は考えます。
── では最後に、プレイヤーとして活躍するために必要な心構えをお伝えください。
三つあります。「自分自身に素直であること。出来ないことはちゃんと出来ないと口にして仲間に助けを求める姿勢」「目標を人に向かって宣言する勇気」「どうすれば掲げたことが出来るのかマイルストーンを置く力」
── まるでこの質問があることを予期していたような回答ですね(笑)
実は社員にいつも言ってることです(笑)まずは自分が何をやりたいのか素直になろう。そして想いがあるなら口にして宣言しよう。出来る出来ないは後にしてひたすら口にしよう。そして出来なかったら謝ろう。誰も怒らないから。挑戦したこと自体に価値があるから。というメッセージです。地方に行けば行くほど、言われたことをきちんとやることが仕事だと勘違いされると感じています。だからこそ本来の仕事、課題を自ら見つけ解決策を検討して実行するという在り方が誰しもに身に付けば良いなと心から願います。
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